

1)白内障とは?
白内障とは、本来透明な水晶体が灰白色や茶褐色に濁る疾患です。
水晶体はカメラのレンズの役割を果たすもので、外から入ってきた光を屈折させて網膜にピントを合わせる機能を持ち、物を見るために非常に重要な組織です。
水晶体は水とタンパク質で出来ていますが、タンパク質は、加齢や、長年にわたる紫外線曝露などの酸化ストレスを受けてだんだんと変性し白く濁ります。
2)白内障の原因
白内障の原因としては、先天性のもの、糖尿病やアトピーなど全身疾患に合併するもの、ブドウ膜炎に併発するもの、ステロイドなど薬剤の副作用によるもの、網膜剥離や眼底出血など眼の手術後に起こるもの、外傷によるものなど様々なものがありますが、圧倒的に多いのが加齢によるものです。
加齢による白内障は40歳代の後半から年齢を重ねるにつれてリスクは高まり、50歳代では40-50%、60歳代では70-80%、70歳代では80-90%に起こるので、ほとんどの人がなる疾患と言われています。
3)水晶体の混濁部位による分類
前嚢下白内障:水晶体の前嚢の下に濁りが出るタイプ
皮質白内障:水晶体の嚢より中心寄りの皮質に濁りが出るタイプ
核白内障:水晶体の中心部分にある核が濁るタイプ
後嚢下白内障:水晶体の後嚢の前に濁りが出るタイプ
前嚢下白内障
皮質白内障
核白内障
嚢下(後嚢下)
白内障
4)白内障の症状
白内障の症状は、物がかすむ、ぼやけて二重に見える、視力が下がるなどが代表的ですが、疲れやすい、明るいところでま
ぶしい、夜間の光がにじんで見える程度の症状の方もいます。
白内障が進行するとかすんで視力が落ちるだけでなく、近視が進んだり、メガネやコンタクトレンズを装用しても見にくくなってきます。
通常、白内障の進行は遅いので初期のうちは
あまり自覚症状が少なく気がつかないことや、片眼が白内障で視力が低下していても、他眼が見えていると気がつかないこともよくあります。
白内障かどうかは、ご本人の自覚症状からだけでは判断できませんので、健康診断で視力低下などがあり眼科を受診して初めて見つかることもよくあります。
風景が二重に見える
明るいところで眩しい
夜間の光が
にじむ
5)白内障の予防と治療
①白内障の予防
白内障は水晶体のタンパク質の酸化ストレスによる変性が原因ですから、外出時にはサングラスやつばの広い帽子、日傘などで紫外線が眼に入るのを防ぐこと、眼精疲労のケアをして目を休めること、高血圧や糖尿病などの生活習慣病を予防すること、 ビタミンE・B2・Cを含む野菜・果物を積極的に摂取しバランスのよい食事をすること、禁煙するなどの酸化ストレスを防ぐことなどで、白内障の発症を遅らせることができると言われています。
②白内障の点眼治療
白内障が初期の段階では点眼薬(カタリン®、カリーユニ®、タチオン®など)による薬物療法が行われることがあります。
これらの点眼薬は水晶体のタンパク質変性を阻害することで、白内障の進行を遅らせる作用があるとされていますが、白内障の進行を抑えることが目的なので、今のところ白内障の治療薬というのはありません。
つまり水晶体の濁りが元に戻ることはないので、白内障になると濁った水晶体を人工水晶体である眼内レンズに交換する手術が行われます。
③白内障手術に使用される眼内レンズの種類と特徴
1. 単焦点眼内レンズと多焦点眼内レンズ
白内障の手術の際に使用される眼内レンズには、単焦点眼内レンズと多焦点眼内レンズがあります。通常の保険診療で使用できるレンズは単焦点眼内レンズのみで、術後に遠方を裸眼で見えるように合わせると近方は老眼鏡が必要になり、逆に近方が裸眼で見えるように合わせると遠方には近視の眼鏡が必要になります。
2. 高度先進医療と評価療養
2020年3月までは高度先進医療(生命保険で給付金が得られ実質的な負担が少なくて済む)で一部の多焦点眼内レンズを使用した手術が可能でしたが、4月以降は多焦点眼内レンズの白内障手術が高度先進医療から外れたため、現在は評価療養(差額ベットと同様な追加料金)で一部の多焦点眼内レンズを使用することが可能です。
3. 自由診療の多焦点眼内レンズ
自由診療の白内障手術は費用が高額になりますが、メスは使わずレーザーで手術をする最先端のレーザー白内障手術で行うことができ、眼内レンズも最先端の全ての種類の多焦点眼内レンズを使用することが出来ます。
自由診療で使用できる多焦点眼内レンズは、近視や遠視、乱視だけでなく老眼も治療することが可能で、遠近両用だけではなく遠中近の3焦点や5焦点のレンズもあります。
また一部のレンズは完全オーダーメイドで、それぞれの方の目に合わせた精度の高いレンズの度数(通常の眼内レンズは眼鏡やコンタクトレンズのように0.50D単位の矯正であるのに対して50倍の高精度である0.01D単位での矯正が可能)でレンズを作成し使用することが出来ます。
白内障の手術は、レーシック手術を受けている方も受けていない方と全く同じ手技で受けることが出来ます。ところがレーシックを受けた方は、近医で白内障の手術は難しいと断られてしまうケースがよくあります。
その理由は、レーシック後の場合は角膜の厚みやカーブが変わってしまっているため、白く濁った水晶体を取り除いた後に入れる眼内レンズの度数計算が難しくなるためです。
白内障手術で使用される眼内レンズの度数は眼の長さや角膜のカーブで計算されますが、レーシック後の場合は計算式のずれが生じ、多くの場合は遠視になり目標とした裸眼視力が得られなくなるからです。
近年、様々な新しい計算式が使用されるようになり、レーシック後の眼内レンズの度数ずれも解消されてきていますが、それでも術後に度数があっていない場合は、眼内レンズの入れ替えやレーシックの再手術が必要になります。
また白内障手術で術後に遠近とも裸眼で見えるように多焦点眼内レンズを使用する場合は、さらに正確な眼内レンズの度数計算が要求されます。
このような理由からレーシック後の白内障手術においては、屈折矯正手術と白内障手術の両方の豊富な経験が必要です。当クリニックの執刀責任者である北澤世志博は、生涯白内障手術症例数は約2万5千件、レーザー屈折矯正手術は約5万件と両術式において豊富な経験と技術を持っていますので、安心してまずはご相談ください。
視能訓練士による精密な検査と経験豊富な眼科専門医による診察により、ひとりひとりの目に合った最適な手術方法についてご説明させて頂きます。
1)レーザー白内障手術とは?
従来の白内障手術は創口作成、水晶体の前嚢(透明な殻)切開、水晶体の核分割から水晶体の超音波乳化吸引、眼内レンズ挿入の全ての過程を執刀医が手で行っていました。
ですから術者の技量により手術時間も数分~20分程度まで異なり、術後の結果も手術侵襲により違うものでした。
一方レーザー白内障手術は最初の創口切開から水晶体の前嚢切開と核分割までをレーザーで行うので、白内障手術に卓越した術者と同等以上に奇麗な手術が可能になります。
そして何よりメスを使うことがないレーザーの手術ですから、患者様が安心して手術を受けることができるというメリットがあります。
またメリットの項で詳しく述べますが、レーザー白内障手術は多焦点眼内レンズの効果を最大限に発揮できる利点があります。
2)レーザー白内障手術の適応
レーザーを使用した白内障手術の適応は、全ての白内障が適応となります。
加齢性白内障を中心にアトピーや糖尿病などによる併発白内障、外傷性白内障などの原因に関係なく、また前嚢下白内障、皮質白内障、核白内障、後嚢下白内障など混濁のタイプが違っても対応できます。
白内障の進行程度も軽度の初発白内障から進行した核白内障、過熟白内障に至るまでレーザーであれば安心して手術が受けられます。
さらに従来の術者が手で行う手術ではリスクのあった浅前房症例、過熟白内障例、チン氏帯脆弱例でもレーザーであれば安心して手術が出来ることも利点です。
3)レーザー白内障手術のプロセス
手術までの流れ
①WEBから初診予約
ご希望の日時を選択してください。
②初診予約確定のメールお受け取り
③コンタクトレンズ装用を制限して初診適応検査
ソフトコンタクトレンズは検査前3日間、ハードコンタクトレンズまたは連続装用コンタクトレンズは検査前2週間装用中止してください。
コンタクトレンズの装用制限が難しい方は、お問い合わせください。 他科での治療を受けていらっしゃる方は主治医の診療情報提供書をご持参ください。
手術の適応があるか判断するための眼の検査のほか眼に病気がないかなども検査します。
散瞳(目薬で瞳を開いて検査)して眼底検査をしますので、検査終了後3~4時間、車の運転は出来ません。
お手元も見えづらくなりますのでご注意ください。
適応検査後に日本眼科学会認定眼科専門医の診察があり、現在の眼の状態、レーザー白内障手術の詳細とその方に合ったおすすめの多焦点眼内レンズを御案内致します。
診察後はマンツーマンのカウンセリングで術前後の注意事項などを説明致しますので、疑問点や心配なことは何でもお尋ねください。
④手術のための抗生物質点眼
手術3日前から点眼してください。感染症予防のために大切な点眼です。
⑤片眼手術当日
手術前日まではコンタクトレンズは装用できますが、当日は眼鏡で御来院ください。
手術後はお一人で帰宅できますが、手術当日は眼帯を装用しますので気を付けてご帰宅ください。
またお一人での帰宅が御心配な方は、ご家族の方の同伴をおすすめ致します。
眼帯をしていますので痛みはありませんが、ゴロゴロした違和感や重い感じがありますので早めに帰宅して眼を休めましょう。
⑥術後翌日検診と他眼手術
御来院後に眼帯を外すと、少しぼやけていますがかなりクリアに見えます。
昨日手術した眼の検査後に他眼の手術を行い、前日と同様に眼帯をしてご帰宅頂きます。
手術翌日からのは点眼がとても大切ですからしっかり使いましょう。
⑦術後検診
御来院後眼帯を外し、両眼の検査をします。
この日から保護用サングラスを起きたらすぐに点眼を始めてください。
4)レーザー白内障手術のメリット
■患者様ごとにカスタマイズした、正確で安全性に配慮した手術
自動化したレーザーで手術を行うことが可能となるため、術前に計画した患者様ごとのカスタマイズされた手術のご提供が可能です。
そのため、それぞれの患者様の眼の状態に合わせた、より正確で安全性に配慮した手術が可能となります。
■手術後の早期視力回復や安定につながる、眼の組織への負担軽減
白内障手術は濁った水晶体を超音波エネルギーを用いて取り除きますが、レーザーを用いることで予め濁った水晶体を分割することができます。
そのため水晶体を取り除く際の超音波エネルギーを低減することができ、眼の組織への負担も最小限に抑えることが可能となります。
眼に対する負担を減らせることは、手術後の早期視力回復や安定にも繋がります。
■歪みのない真円な前嚢切開で、眼内レンズの機能を最大化
多焦点眼内レンズはレンズの機能を最大限に発揮するために嚢(水晶体の殻)の中心に固定されることが要求されます。
レーザー白内障手術は手術の中でも重要な前嚢切開という工程で、術者の手による手術では難しかった歪みのない真円を嚢の中心に作成することが可能なため、多焦点眼内レンズを奇麗に固定することができ、良好な視力を得ることができます。
■歪みのない真円な前嚢切開で後発白内障のリスクも低減
白内障の手術では、挿入した眼内レンズの後嚢が濁って視力が低下する後発白内障が時として起こることがあります。
YAGレーザーというレーザーで濁りの膜を取ると視力の回復が得られますが、後発白内障は前嚢切開の奇麗さ(正円で中心にあるかどうか、レンズ全体を奇麗に覆っているかどうか)で変わってきます。
レーザー白内障手術では、歪みのない真円な前嚢切開ができるので後発白内障のリスクも低減することが出来ます。
■ 難症例でも安全確実な手術
従来の手で行う手術では難しかった、過熟白内障、チン氏帯脆弱、浅前房症例でもレーザーであれば安全確実に前嚢切開を行うことが出来ます。
また超音波エネルギーが高くなり眼に対する侵襲が強くなる進行した核白内障でも、レーザーで核を予め分割することで使用エネルギーを減らし眼の負担を軽減できます。
5)レーザー白内障手術のデメリット
■手術費用
健康保険が効かず、最先端のレーザーを使用し、さらに多焦点眼内レンズは患者様のご希望に沿ったレンズで最適なものをオーダーメイドで作成するため通常の白内障手術より手術費用が高くなります。
■手術時間
レーザーを照射する工程があるため通常の白内障手術と比べ少し時間が長くなります。
通常の白内障手術は片眼数分ですが、レーザー白内障手術では片眼10分程度です。
■器具により出血がある場合も
レーザーを照射する際に眼球を固定する器具を結膜(白目部分)に装着します。
眼が動かないように弱い吸引をかけるため、患者様によっては白目に少し出血を起こす場合があります。
ただしこの出血も1~2週間で自然に吸収されます。
■術前後の点眼やケアは大切
レーザーによる白内障手術は通常の白内障手術よりも眼に対する負担は少ないですが、やはり充血や炎症は起きますし、点眼を怠ると感染症のリスクも0ではありません。
術前後の点眼や生活制限など注意事項はしっかり守って頂くことが大切です。
※医療ローンをご利用になられる方は2回目の検査までにお申し出ください。