アイクリニック東京グループでは、様々な目の疾患について、皆様に少しでも理解を深めていただけるコンテンツを用意しました。
今回は、〜 糖尿病網膜症 編 〜 です。
■糖尿病網膜症(とうにょうびょうもうまくしょう)
【原因・病態】
糖尿病網膜症は、糖尿病によって引き起こされる網膜の病気です。高血糖により網膜の血管はダメージを受け、網膜の機能が低下することが特徴です。糖尿病網膜症は糖尿病腎症・神経障害とともに糖尿病の3大合併症のひとつであり、成人の失明原因の上位に位置します。
血糖が高い状態が長く続くと、網膜の細い血管は少しずつ損傷を受け、変形したりつまったりします。血管がつまると網膜の隅々まで酸素が行き渡らなくなり、網膜が酸欠状態に陥り、その結果として新しい血管(新生血管)を生やすことで酸素不足を補おうとします。新生血管はもろいために容易に出血を起こします。また、出血すると網膜にかさぶたのような膜(増殖組織)が張ってきて、これが原因で網膜剥離を起こすことがあります。
【症状】
糖尿病網膜症は、糖尿病になってから数年から10年以上経過して発症するといわれていますが、かなり進行するまで自覚症状がない場合もありますので、まだ見えるから大丈夫という自己判断は危険です。
糖尿病網膜症は、進行の程度により大きく三段階に分類されます。
(1) 単純糖尿病網膜症
初期の糖尿病網膜症です。最初に出現する異常は、細い血管の壁が盛り上がってできる血管瘤(毛細血管瘤)や、小さな出血(点状・斑状出血)です。蛋白質や脂肪が血管から漏れ出て網膜にシミ(硬性白斑)を形成することもあります。これらは血糖値のコントロールが良くなれば改善することもあります。この時期には自覚症状はほとんどありません。
(2) 前増殖糖尿病網膜症
単純糖尿病網膜症より、一歩進行した状態です。細い網膜血管が広い範囲で閉塞すると、網膜に十分な酸素が行き渡らなくなり、足りなくなった酸素を供給するために新しい血管(新生血管)を作り出す準備を始めます。この時期になるとかすみなどの症状を自覚することが多いのですが、全く自覚症状がないこともあります。前増殖糖尿病網膜症では、多くの場合、網膜光凝固術を行う必要があります。
(3) 増殖糖尿病網膜症
進行した糖尿病網膜症で重症な段階です。新生血管が網膜や硝子体に向かって伸びてきます。新生血管の壁が破れると、硝子体に出血することがあります。出血が起こると、視野に黒い影やゴミの様なものが見える飛蚊症と呼ばれる症状を自覚したり、出血量が多いと急な視力低下を自覚したりします。また、増殖組織といわれる線維性の膜が出現し、これが網膜を引っ張って網膜剥離(牽引性網膜剥離)を起こすことがあります。この段階の治療には、手術を必要とすることが多くなりますが、手術がうまくいっても日常生活に必要な視力の回復が得られないこともあります。
【治療】
治療としては、症状の進行状況と重症度によって異なりますが、網膜光凝固術(レーザー治療)、硝子体手術があります。
網膜光凝固術は、新生血管の発生を予防したり、すでに出現してしまった新生血管を減らしたりすることを目的として行います。
この治療は今以上の網膜症の悪化を防ぐためのものであって、元の状態に戻すための治療ではありません。
網膜症の進行具合によって、レーザーの照射数や照射範囲が異なります。網膜光凝固術は早い時期であればかなり有効で、将来の失明予防のために大切な治療です。
硝子体手術は、進行した糖尿病網膜症によって引き起こされる硝子体出血や網膜剥離の治療として行われます。目の中の出血や増殖組織を取り除いたり、剥離した網膜を元に戻したりする手術になります。
【総括】
糖尿病は、糖尿病自体の管理が重要です。血糖値、血圧、コレステロールなどを適切に管理し、網膜の血管に与えるダメージを抑えることが重要になります。
発症の予防や重症化を防ぐための早期発見・早期治療が重要となる為、糖尿病の人は、視力低下など目の症状がなくても、内科で糖尿病と診断された段階で、定期的に眼科を受診し、眼底検査を受けるようにしましょう。