アイクリニック東京グループでは、様々な目の疾患について、皆様に少しでも理解を深めていただけるコンテンツを用意しました。
今回は、〜 黄斑前膜 編 〜 です。
■黄斑前膜(おうはんぜんまく)
【病態】
網膜上膜、網膜前膜、黄斑前膜とも呼ばれます。
黄斑前膜とは、黄斑部に薄い透明な膜が形成される疾患です。黄斑部とは網膜の中心に位置し、視力の鮮明さと細かな視覚情報の処理に重要な役割を果たしています。
【症状】
早期には自覚症状はありませんが、進行すると膜が縮み、網膜にしわができるため、視力が低下したり、物が歪んで見えたり、物が二重に見えたりなどの症状が現れる事があります。
物が歪んで見えるかどうかを確認するのに、「アムスラーチャート」という自己チェックツールがあります。
- ①アムスラーチャートを目から約30〜40㎝離します。
- ②片目ずつ、シートの中央の黒い点を見つめます。
- ③歪みや見えないところはないか調べます。
アムスラーチャートの中心の点から外れた部分が歪んで見えたり、曲がって見えたりする場合は、異常がある可能性があります。またグリッド状の線が欠けて見えたり、重なって見えたりすることも異常のサインです。
【原因】
主な原因は、加齢に伴う網膜や硝子体の変化によるものです。加齢によって生じる後部硝子体剥離が病態に関わっているため、中高年に多い疾患であり、特に50~70歳代の方に多く見られます。
また、網膜裂孔発生後、網膜剥離手術後、ぶどう膜炎などに伴って生じる続発性のものもあります。
【治療】
自覚症状が軽度の場合は、定期的な検診で経過観察を行います。病状が進行し、重度の症状がある場合や視力の低下が進行している場合は、硝子体手術が行われます。手術によって眼内のゼリー状の物質である硝子体を取り除いた上で、網膜表面に存在する膜を小さなピンセットで除去します。
黄斑前膜は手術のタイミングが難しい疾患で、網膜剥離のように急激に進行して、放置すると失明してしまう疾患であれば、すぐに手術を行う必要がありますが、黄斑前膜の進行は基本的にゆっくりであることが多く、数年から十数年かけてじわじわと進行していきますので、手術のタイミングは執刀医と患者さんでよく相談して決めることが多いです。
症状が進行して日常生活に影響を及ぼしている場合は、早めの手術が必要となり、適切なタイミングで手術を行うことで、視力の改善が期待できる場合があります。
【総括】
黄斑前膜の症状が現れたら早めに眼科医に相談し、適切な診断と治療を受けることが重要です。眼科医が患者さんの状態を評価し、最適な治療法と手術のタイミングを決定します。早期の対応が視力の維持や改善につながる可能性が高いため、早めの診断・治療が重要となります。