「眼内コンタクトレンズ」という言葉に出会い、ICLとIPCLの違いが気になった人は多いはずです。
目の中にレンズを入れる治療と聞くと、安全性や将来への影響に不安を感じるのは自然なことで、誤った理解は後悔につながりかねません。
この記事では、厚生労働省承認状況や査読論文などの信頼できる情報をもとに、ICLとIPCLの違いを整理し、検査やカウンセリングを受ける前に基礎知識を提供します。
【目次】
【目次】
1. ICLとIPCLとは?違いを理解するための基礎知識
この章では、ICLとIPCLという2つの眼内コンタクトレンズによる視力矯正方法について、基本的な仕組みや特徴を整理します。どちらも角膜を削らずに視力を矯正できる点が共通していますが、開発背景や承認状況、対応範囲などに違いがあります。まずはそれぞれの概要を正しく理解することで、自分に合った治療法を検討するための土台を作りましょう。
ICLとは?
ICLは角膜を削らず、水晶体を残したまま眼内にレンズを挿入する視力矯正方法です。正式名称はImplantable Collamer Lensで、有水晶体眼内レンズに分類されます。
強度近視や角膜が薄くレーシックが適応外となる人にも適応となる場合があり、レンズは必要に応じて取り外せるため、可逆性がある点も特徴です。
ICLは2010年に日本で厚生労働省の承認を受け、世界的にも長期データが蓄積されています。
IPCLとは?
IPCLはICLと同じく有水晶体眼内レンズを用いた視力矯正方法で、比較的新しい選択肢です。正式名称はImplantable Phakic Contact Lensです。乱視や強度近視への対応範囲が広く、レンズ設計の自由度が高い点が特徴とされています。
また、IPCLには老眼に配慮した多焦点設計のモデル(Presbyopic IPCL)もあり、遠く・中間距離・近く(読書)を1枚のレンズでカバーする設計が存在します。これにより、条件が合う人では読書用眼鏡への依存を減らすことを目的としています。
IPCLはヨーロッパCEマークを取得し、2025年に日本でも厚生労働省の承認を受けました。
コスト面で選択肢になりやすい点も注目されています。
ICLとIPCLの違いを一覧で比較
ここでは、IPCLとICLの違いを一覧で比較します。細かな違いを知ることで、自身の視力や条件に合った選択肢を検討しやすくなるでしょう。
| 比較項目 | ICL | IPCL |
|---|---|---|
| 素材 | コラマー(Collamer) | 親水性アクリル |
| 屈折矯正量 | +6D〜-18D | +5D〜-30D |
| 設計・構造の特徴 | 4点接触ハプティクス | 6点接触スプリングハプティクス |
| カスタマイズ性・選択肢 | サイズは4種類。設計は比較的標準化 | サイズは0.25mm刻みで13種類。フルカスタマイズ対応 |
| 比較項目 | ICL | IPCL |
|---|---|---|
| 素材 | コラマー(Collamer) | 親水性アクリル |
| 屈折矯正量 | +6D〜-18D | +5D〜-30D |
| 設計・構造の特徴 | 4点接触ハプティクス | 6点接触スプリングハプティクス |
| カスタマイズ性・選択肢 | サイズは4種類。設計は比較的標準化 | サイズは0.25mm刻みで13種類。フルカスタマイズ対応 |
2. ICLとIPCL の手術方法に違いはある?
この章では、ICLとIPCLにおける手術方法の違いについて解説します。両者は同じ有水晶体眼内レンズを用いる治療であり、手術の基本的な流れや所要時間に大きな差はありません。あらかじめ手術内容を把握しておくことで、治療に対する不安や疑問を軽減し、安心して検討を進められるでしょう。
手術手順は基本的に同じ
ICLとIPCLはいずれも、角膜にごく小さな切開を加え、そこから折りたたんだレンズを眼内に挿入する手術方法です。角膜を削ることはなく、水晶体を残したまま行う点が共通しています。点眼麻酔で実施されるため痛みは最小限に抑えられ、術中の身体的負担も比較的少ないとされています。
手術時間・入院の有無
手術時間は片眼あたり数分から長くても十数分程度で、多くのケースが日帰り手術となります。術後はしばらく院内で経過観察を行いますが、特別な問題がなければその日のうちに帰宅可能です。入院の要否は施設方針や状態によりますが、日帰りが一般的とされています。
医師の技術・施設体制が結果に与える影響
ICLとIPCLというレンズの種類以上に重要なのが、術前検査の精度と医師の経験です。眼の状態を正確に測定し、適切なレンズサイズや度数を選定できるかが仕上がりに直結します。実績が豊富で検査体制が整った医療機関を選ぶことが、満足度の高い結果につながります。
3. ICLとIPCLの費用の違いと価格差の理由
ここでは、費用差が生じる背景を整理します。価格だけで判断するリスクも確認できます。
ICLの一般的な費用相場
ICLは両眼で約60〜80万円が一般的な相場です。研究開発費や長年の臨床実績が価格に反映されています。
IPCLが比較的安価な理由
IPCLは製造コストを抑えやすく、40〜60万円程度が目安とされています。これは、設計や製造体制の違いが影響しています。
費用だけで選ぶことの注意点
初期費用のみで判断すると、長期的な安心を見落とす可能性があり、安全性やフォロー体制も含めて比較が必要です。
4. ICLとIPCLの安全性・リスクの違い
この章では、ICLとIPCLに共通するリスクと、それぞれの安全性評価の考え方を整理します。重要なのは「危険かどうか」を二択で判断するのではなく、どのようなリスクが、どの程度報告され、どう管理されているかを理解することです。
フェイキックIOLに共通するリスク
眼圧上昇、炎症、白内障などの合併症リスクが報告されています。これらはレンズを眼内に挿入する治療である以上、ICL・IPCLのどちらにも共通するリスクです。
ただし、現在の臨床では発生頻度は低いとされており、多くの場合は術後の定期検診によって早期発見・対応が可能とされています。そのため、フェイキックIOLは「一度手術したら終わり」の治療ではなく、長期的なフォローを前提とした医療行為である点を理解しておく必要があります。
白内障リスク
フェイキックIOLでは、長期的には白内障リスクが指摘されています。これは、レンズと水晶体との距離が近すぎる場合、水晶体への影響が生じる可能性があるためです。
ICLでは長期データが蓄積されており、レンズ設計やサイズ選択、術前検査の精度向上によって、白内障リスクは以前より低減してきたと評価されています。一方、IPCLについては日本承認からの経過年数が短く、同程度の長期データはまだ十分に揃っていない段階です。この点は、両者の違いとして理解しておく必要があります。
長期データの有無
ICLは20年以上の臨床データがあり、安全性評価が進んでいます。IPCLは、海外での使用実績や研究報告はあるものの、日本承認後の長期データは今後さらに蓄積される段階です。「危険だから避ける」という意味ではなく、「評価の厚みがこれから増えていく段階」と捉えるのが現実的です。
日本承認の有無と安全性評価の関係
ICLとIPCLはいずれも制度上の安全性評価を通過した治療法であることは共通しています。一方で、承認の有無だけで長期的な安全性がすべて評価できるわけではありません。承認からの経過年数が長いほど、術後合併症や経年変化に関するデータが蓄積されるため、安全性評価の厚みには差が生じます。この点で、2010年に承認されたICLと、2025年に承認されたIPCLでは、判断材料の量に違いがあることは事実です。
また、承認後も医療機器は市販後調査や臨床報告を通じて継続的に評価されます。そのため、安全性は一度で確定するものではなく、時間と症例数によって精度が高まっていく評価軸である点を理解しておく必要があります。
治療を選択する際には、「承認されているか」だけでなく、「どのくらいの期間、どの程度の症例データが蓄積されているか」という視点を持つことが重要です。
5. ICLとIPCLの見え方・適応の違い|どんな人に向いている?
この章では、ICLとIPCLがどのような人に向いているかを整理します。ここで重要なのは、見え方そのものに大きな優劣があるわけではないという点です。自己判断ではなく、医師相談の前提として活用してください。
強度近視・乱視への対応
両者とも強度近視に対応しますが、乱視度数や眼の形状で適応が分かれます。レンズの設計やサイズ選択は、術前検査の結果に基づいて個別に判断されるため、「どちらが必ず優れている」と一概に言うことはできません。
角膜が薄い人
角膜を削らないため、角膜が薄い人にとって、ICL・IPCLはいずれも有力な選択肢になります。この点は、フェイキックIOL全体の大きなメリットといえます。
老眼との関係
老眼そのものは改善しませんが、将来取り外せる点は特徴です。水晶体を残したままレンズを挿入するため、将来の老眼進行や白内障手術を見据えた治療計画を立てやすいという特徴があります。
特に若年〜中年層では、「今の視力矯正」と「将来の眼の変化」を切り分けて考えられる点が、角膜を削る不可逆手術との違いになります。
レーシックとの違い
レーシックは角膜を削る不可逆手術である点が大きな違いです。この可逆性は、将来の治療選択肢を残したい人にとって判断材料の一つになります。
6. ICLとIPCLはどっちが向いている?選び方のポイント
この章では判断軸を整理します。実際の診療現場では、同じ近視度数であっても眼の構造や生活環境によって適切な選択が異なります。
例えば、夜間運転の頻度や仕事での視機能の要求度、将来的な治療計画などは、レンズ選択に影響する要素です。こうした背景を含めて判断することが、満足度の高い結果につながります。
安全性・実績を重視する場合
長期データと実績を重視する場合、臨床データが豊富なICLは判断しやすい選択肢になります。医師側も過去の症例を踏まえた説明がしやすく、リスク評価が比較的明確です。
費用を抑えたい場合
適応条件を満たせばIPCLが選択肢になる場合もあります。ただし、その場合でも術前検査の精度や術後フォロー体制が十分であることが前提となります。
医師と相談すべきポイント
治療選択では、眼の構造(前房深度、角膜内皮細胞数など)に加え、生活スタイルや将来の治療計画を医師と共有することが重要です。レンズの種類だけで判断せず、検査結果と長期的な視点を踏まえた相談を行うことが、後悔のない選択につながります。
なお、ICLとIPCLのいずれを選択する場合でも、術前検査の結果によっては治療自体が適応外となるケースがあります。選択肢を比較する前に、まず自分の眼がフェイキックIOLに適しているかを確認することが重要です。
7. まとめ:ICLとIPCLの違い
ICLとIPCLはいずれも角膜を削らない視力矯正方法で、日本で承認された医療機器です。
ICLは長期データと実績が豊富で、安全性重視の判断に向いています。IPCLは比較的新しい選択肢ですが、承認取得とともに選択肢として検討され始めています。
治療選択には十分な情報理解が欠かせません。最終的な判断は検査結果と医師の説明を踏まえ、自分の眼に合った方法を選ぶことが重要です。



















