【目次】
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1. 老眼手術とは?
40代以降に多くの人が悩む老眼(老視)。加齢によってピント調節力が低下し、手元の文字など近くのものが見えにくくなります。一般的には老眼鏡や遠近両用メガネでの対応が主流ですが、近年、外科手術によって老眼を矯正し、「メガネに頼らずに生活したい」というニーズに応える選択肢が増えました。
しかし、現状では老眼を完全に治す“完璧な方法”は存在していないとされ、どの手術法にもメリット・デメリットやリスクがあります。老眼手術を検討する際には、手術内容や費用、得られる効果の持続性などを正しく理解し、自分の生活スタイルや目の状態に合った方法を選ぶことが大切です。
本記事では、代表的な老眼手術の種類や特徴、メリット・デメリット、費用の目安、患者様の体験談や術後ケアのポイントなどを分かりやすくまとめました。40~50代の初期老眼から、白内障を兼ねているシニア層まで、「老眼に悩むすべての方」とご家族の参考になれば幸いです。
2. 老眼手術の主な種類
老眼を手術で矯正するアプローチは、大きく分けると以下の2系統になります。
- 1.角膜を操作する方法
- ⚫︎ LASIKモノビジョン(モノビジョンレーシック)
- ⚫︎ 多焦点レーザー手術(PresbyLASIKなど)
- 2.有水晶体眼内レンズを挿入する方法
- ⚫︎ ICL(モノビジョン)
- ⚫︎ 遠近両用眼内コンタクトレンズ(IPCL、EVO Viva ICL)
- 3.水晶体を人工レンズに置き換える方法
- ⚫︎ 屈折性レンズ交換(クリアレンズ抽出術)
- ⚪︎ 多焦点眼内レンズ(2焦点・3焦点など)を挿入
さらにかつて行われた角膜インレー(角膜内レンズ挿入術)、電動式角膜形成術(CK手術)などもありますが、現在一般的ではありません。本記事では、主に上記3種類を中心に、メリット・デメリット、合併症リスク、費用などを詳しく解説していきます。
1. LASIKモノビジョン(モノビジョンレーシック)
概要と特徴
- ⚫︎ 両眼の役割分担で遠近をカバー
- ⚫︎ 簡便で回復が早い
レーシック手術の一種で、「利き目」を遠方にピントを合わせ、「もう片方の目」をあえて近視状態に矯正します。片眼ずつ異なる度数を設定することで、両眼で見たときに「遠くも手元も見える」ようにする方法です。メガネの着脱を減らせる利点があり、日本国内でも比較的行われています。
一般的なLASIKと手術手順は同様で、角膜をレーザーで削って度数調整を行います。所要時間は15分ほど、日帰りで受けられ、翌日から普段の生活に復帰できるケースが大半です。追加矯正もしやすいため、「将来、度数調整をしたい場合」も対応が可能です。
メリット
- ⚫︎ 老眼鏡の使用頻度を大幅に減らせる
- ⚫︎ 軽~中度の近視の方は特に適応良好
日常的なスマホや読書、買い物の値札確認など、近くを見るシーンでメガネ不要になる方が多いです。と同時に、遠方担当の目で遠くを見るので、運転やスポーツもある程度裸眼でこなせます。
もともと近視の人は「裸眼で近くが見える」ことに慣れており、片眼を近視のまま残すモノビジョンには馴染みやすい傾向があります。
デメリット・リスク
- ⚫︎ 立体視の低下・脳の慣れの問題
- ⚫︎ 夜間や長時間の近業には不向き
- ⚫︎ 効果が永遠ではない
意図的に左右の視度差を作るため、奥行き感や細かい距離感がやや低下します。人によっては違和感や両目のチグハグ感が残り、約10~20%の方はどうしても慣れないことがあると報告されています。
運転や細かい作業では、片眼しかピントが合っていないことが負担になるケースがあります。とくに暗所では近方用の目がぼやけたり、遠方用の目だけではハロー・グレア(光のにじみ)が強く感じられたり眼精疲労が出やすい可能性があります。
老眼の進行は止められないため、5~8年ほど経つと近方の視力が徐々に落ち、「追加でレーシックを受ける」あるいは「老眼鏡も併用する」など再度対応が必要になるケースがあります。
術後ケア・費用
- ⚫︎ 回復は早いが、慣れは1~3ヶ月かけて
- ⚫︎ 費用は両眼で約40~50万円程度が目安
翌日から基本的な生活はできますが、「両目の視度差」に脳が順応するには数週間~数ヶ月がかかるとされます。ドライアイ予防の点眼や定期検診はしっかり受けましょう。
公的医療保険は適用外の自由診療です。クリニックや術式によって料金は前後します。
2. 多焦点レーザー手術(PresbyLASIKなど)
概要と特徴
LASIKの進化版ともいえるアプローチで、角膜を“多焦点”の形状に再設計して、1つの目で遠く・近くの両方が見えるようにする手術です。片眼が遠方、もう片眼が近方を担当する「モノビジョン」と異なり、各眼それぞれで遠近両用を実現しようという考え方です。
メリット
- ⚫︎ 両目とも遠近視力を得られる
- ⚫︎ 角膜のみを操作
モノビジョンほど左右の視度差が大きくならないため、立体視を保ちやすいのが特徴です。遠方でも両眼を使う、近方でも両眼を使うため、自然な見え方が得られる可能性があります。
眼内手術(白内障手術など)に比べて侵襲が小さく、術後の回復も早期です。将来白内障手術を受ける場合でも、角膜を削ったことで大きな障害になることは少ないとされています。
デメリット・リスク
- ⚫︎ コントラストや夜間視力の低下
- ⚫︎ 技術がまだ普及段階
- ⚫︎ 老眼の進行には対応しきれない
多焦点の性質上、網膜には遠近両方の像が重なるため、シャープさが若干落ち、夜間にハロー・グレアを感じる方も少なくありません。
施術できる度数が限られ、近視の矯正は僅かで遠視の方が中心です。矯正視力が低下することが多く、満足度にもばらつきがあるとの報告があり、必ずしも万人向けとはいえません。
角膜の形状は変えても、水晶体の硬化自体は進んでいきます。加齢とともに近くが再び見づらくなる可能性があり、長期データはまだ十分に蓄積されていません。
術後ケア・費用
- ⚫︎ 初期違和感は徐々に軽減
- ⚫︎ 費用は両眼50万円前後が相場
術後数週間は「遠近どちらも鮮明度がやや落ちる」感覚が出ても、脳が適応すると視界が安定していく例が多いです。
やはり自由診療で保険適用はありません。最先端の機器や高度なノウハウが必要なため、通常のレーシックよりやや高額になりがちです。
3. ICL(モノビジョン)
概要と特徴
ICL(眼内コンタクトレンズ)を眼内に挿入し、片方の目は近くを、もう片方の目は遠くを見えるようにピントを合わせ、両眼で見た時に遠くも近くも見えるように視力を調整する方法です。治療の考え方としてはモノビジョンレーシックと同じですが、メリット・デメリットは異なります。
メリット
- ⚫︎ 老眼鏡の使用頻度を大幅に減らせる
- ⚫︎ 可逆的で取り外しが可能
モノビジョンレーシックと同様にスマートフォンや読書、買い物の値札確認など、日常的に近くを見るシーンでメガネが不要になる方が多いです。同時に、遠方にピントを合わせている目で遠くを見るので、運転やスポーツもある程度裸眼で行うことができます。
もし不具合があった場合、ICLを抜去すれば挿入する前の元の状態に戻すことができます。術後の経過でトラブルがあってもリカバリーしやすい点は心理的なメリットです。またレーシックとは異なり角膜を削らないのでドライアイが悪化することはありません。
デメリット・リスク
- ⚫︎ ハロー・グレア(光のにじみ)
- ⚫︎ 目の疲れ
レーシックほどではありませんが、ハロー・グレアが起こる可能性があります。
人によっては見え方になかなか慣れず、目の疲れが起こります。
術後ケア・費用
- ⚫︎ 短時間の日帰り手術
- ⚫︎ 両眼40~80万円ほど
通常であれば、片眼10分程度で終わります。術後1ヶ月程度は感染予防のための点眼が必要です。
公的保険の適用はなく、施設ごとに料金設定が異なります。
4. 遠近両用眼内コンタクトレンズ(IPCL、EVO Viva ICL)
概要と特徴
近視矯正ICLの遠近両用タイプで、白内障手術時に使用される多焦点眼内レンズの構造を応用して作られたレンズで、近くから遠くまで見えるように設計されていて、近視・遠視・乱視に加えて老眼の矯正も可能です。
メリット
- ⚫︎ 老眼鏡の使用頻度を大幅に減らせる
- ⚫︎ 可逆的で取り外しが可能
近視と老眼を同時に矯正できるので、日常生活でメガネが不要になる方が多いです。運転やスポーツもある程度裸眼でこなせます。
ICLと同様に、もし不具合があった場合、レンズを抜去すれば挿入する前の元の状態に戻すことができます。術後の経過でトラブルがあってもリカバリーしやすい点は心理的なメリットです。
デメリット・リスク
- ⚫︎ ハロー・グレア(光のにじみ)
- ⚫︎ 厚生労働省未承認(2025年3月時点)
- ⚫︎ 見え方の質が劣る
レーシックほどではありませんが、ハロー・グレアが起こる可能性があります。
ヨーロッパ でCE マークは取得していますが、米国 FDA や日本の厚労省は未承認になります。挿入実績も近視治療のICLと比べるとまだまだ少ないです。
レンズの構造上、光を遠方、中間、近方に振り分けるので裸眼や近視治療のICLの見え方と比較すると鮮明度(見え方の質)がやや劣ります。
術後ケア・費用
- ⚫︎ 短時間の日帰り手術
- ⚫︎ 両眼80~100万円ほど
通常であれば、片眼10分程度で終わります。術後1ヶ月程度は感染予防のための点眼が必要です。
公的保険の適用はなく、施設ごとに料金設定が異なります。また、近視治療のICLよりも費用が高額な傾向にあります。
5. 屈折性レンズ交換(クリアレンズ抽出術)
概要と特徴
白内障手術と同じ工程で、透明な水晶体を取り除き、多焦点眼内レンズ(遠近両用)を挿入して老眼を根本的に矯正する方法です。レーシックや角膜インレーが角膜を操作するのに対し、こちらは「水晶体を人工レンズに置き換える」ため、将来的に白内障になるリスクを同時に解消できるメリットがあります。
メリット
- ⚫︎ 老眼+白内障を一挙に解決
- ⚫︎ 効果が半永久
- ⚫︎ 強度の近視や遠視にも有効
水晶体自体がなくなるため、今後白内障が進行しません。50代以降、老眼と白内障兆候が出ている方には「早めにレンズ交換してしまう」選択肢が広がっています。
角膜を削る手術と違い、水晶体の硬化進行を気にする必要がありません。多焦点眼内レンズには2焦点、3焦点さらに最先端の5焦点レンズまであり、「遠方~中間~近方」まで広範囲をメガネなしで見えるようになるケースが増え、術後の患者満足度も高いと報告されています。
レーシックが難しい「角膜が薄い」「-10D以上の強度近視」「+5D以上の強度遠視」などでも、水晶体交換なら度数を調整しやすく、高い矯正効果が期待できます。
デメリット・リスク
- ⚫︎ 眼内手術による合併症リスク
- ⚫︎ ハロー・グレア(夜間光視症)
- ⚫︎ 若年者への適応は慎重
- ⚫︎ 費用が高額
レーシックより侵襲が大きく、ごく稀ですが重篤な感染や網膜剥離(特に強度近視の方)など、リスクがわずかに高まります。手術時間は片眼15分程度の日帰りで行える場合が多いです。
多焦点眼内レンズの構造上、対向車のライトがにじんで見える、眩しく感じるなどの症状が出やすいです。多くは脳が慣れて気にならなくなりますが、まれに我慢できないレベルの方も。
まだ水晶体が十分に透明で、調節力が残っている40代前半などでは、わざわざ水晶体を外すリスクを背負うメリットが少なくなります。一般的に50代以降が対象となることが多いです。
多焦点眼内レンズは片眼50万円~70万円、特にレーザーを使用した最先端の白内障手術の場合、両眼100万~200万円になることもあり、老眼手術の中で最もコストが高い部類です。白内障として保険適用できるかどうかで負担額が大きく変わります。
3. 術後ケアと注意点
- 1. 定期検診の受診
- 2. ドライアイ対策
- 3. 夜間運転や細かい作業への備え
- 4. 老眼は進行する可能性がある
どの手術法でも、術後の定期検診は非常に大切です。角膜の状態や眼圧、視力などを定期的に確認し、必要に応じた追加処置や点眼治療を行います。
レーシック系の手術では術後ドライアイが起こりやすく、乾燥感が出ることがあります。処方点眼を怠らず、目の乾燥を防ぎましょう。
モノビジョンや多焦点の視界特性で、夜間に若干のグレア・ハローが生じるかもしれません。不安な場合は時間帯や交通状況を選んで運転したり、必要に応じて弱いメガネを併用したりするなど工夫が必要です。
角膜におけるLASIKなどの手術では老眼の進行を止めるわけではありません。最終的にはレンズ交換(白内障手術)に移行する場合がある点も念頭に置きましょう。一方、屈折性レンズ交換なら老眼が進行せず効果が半永久的ですが、術後に多焦点レンズ特有の夜間光視症状などが起こり得るため、十分にメリット・リスクを検討してください。
4. 費用と保険のポイント
- ⚫︎ LASIK、多焦点レーザー手術
- ⚫︎ ICL(モノビジョン)、遠近両用眼内コンタクトレンズ(IPCL、EVO Viva ICL)
- ⚫︎ 屈折性レンズ交換(多焦点眼内レンズ)
- ⚪︎ 白内障の診断がある場合
- ⚪︎ 白内障がない場合(クリアレンズ交換)
老眼は病気ではなく、これらは美容的・選択的医療扱いになるため、公的医療保険は適用外(自由診療)となります。クリニック独自のローン制度や医療費控除などを利用する方もいます。
LASIKと同様に、公的医療保険は適用外(自由診療)となります。クリニック独自のローン制度や医療費控除などを利用する方もいます。
選定療養という形で、白内障手術そのものは保険適用となり、レンズの種類は限られますが、多焦点レンズの差額分(数十万円程度)を自己負担で手術が受けられる仕組みがあります。
純粋に屈折矯正目的のため、全額自費になりますが、選定療養と異なり5焦点眼内レンズが選べるなど多種類のレンズから自分に合ったレンズを選択できる利点があります。片眼60万円~90万円前後が一般的な目安です。
5. まとめ:老眼手術の比較一覧


最後に
老眼手術は「老眼を克服してメガネなしの生活を送りたい」「見え方のクオリティを高めてQOLを向上させたい」という方にとって、大きな可能性を秘めています。とはいえ、どの方法にもリスクや限界があるのが現状です。
- 「夜間運転が多い」「デスクワーク中心で近くを見る時間が長い」「強度近視・遠視だが白内障の兆候がある」など、あなたの目の屈折状態や生活習慣によって最適解は異なります。
- 将来的に白内障手術と組み合わせるかどうかも含め、医師との相談が欠かせません。
手術を検討する際は、信頼できる眼科専門医で精密検査を受け、メリットとリスクを十分に理解したうえで納得して決断しましょう。術後のケアや定期検診をきちんと行えば、高い満足度を得られるケースも多く報告されています。
本記事が、老眼手術に興味をお持ちの方や、ご家族の検討材料としてお役に立てば幸いです。老眼鏡という選択を含め、より快適な視生活を目指すヒントになればと思います。