「白内障の手術を勧められたけれど、結局いくらかかるのだろう…」そう感じている方は少なくありません。
白内障手術の費用は、選ぶ眼内レンズによって数万円から百万円以上まで大きく幅があります。
しかも「保険適用」「選定療養」「自由診療」という聞き慣れない言葉が絡み合い、余計に分かりにくく感じてしまいます。
この記事では、白内障手術の費用を決める仕組みをシンプルに整理したうえで、単焦点レンズ(保険適用)と多焦点レンズ(選定療養・自由診療)の費用差を具体的な金額で紹介。
あわせて、2026年8月に改正されたばかりの高額療養費制度や、医療費控除・生命保険の給付金など、自己負担を軽減できる制度もまとめて解説します。
目次
白内障手術の費用は「レンズの種類」で決まる

白内障手術の費用は、年齢や症状の重さで決まると思われがちですが、実際に金額を左右する最大の要因は「どの眼内レンズを選ぶか」です。
同じ白内障の手術でも、使用するレンズによって数万円で済む場合もあれば、百万円近くかかる場合もあります。
まずは費用の全体像をつかむために、レンズによって適用される制度がどう変わるのかを整理しておきましょう。
費用は3つの区分(保険診療・選定療養・自由診療)に分かれる
白内障手術の費用は、大きく分けて次の3つの区分のどれに該当するかで決まります。
| 診療区分 | 使用するレンズ | 費用の考え方 |
|---|---|---|
| ①保険診療 | 単焦点眼内レンズ | 手術・レンズ代すべてが保険適用。自己負担割合(1〜3割)に応じた金額のみ |
| ②選定療養 | 国内承認の多焦点眼内レンズ | 手術部分は保険適用、多焦点レンズの追加費用のみ自費 |
| ③自由診療 | 国内未承認レンズ・レーザー白内障手術など | 手術・検査・レンズ代のすべてが全額自己負担 |
「保険が使えるかどうか」で費用が数十万円単位で変わるため、まずこの3区分を理解することが費用感をつかむ第一歩になります。
費用を左右するのは「単焦点」か「多焦点」か
単焦点眼内レンズは、ピントが合う距離が1か所に固定されるレンズで、白内障の治療を目的とするため保険が全額適用されます。
一方、多焦点眼内レンズは遠くと近くの両方にピントを合わせられるレンズで、老眼鏡への依存を減らせる反面、公的医療保険の対象外です。
2020年4月の制度改正により、国内承認済みの多焦点レンズは「選定療養」として保険診療と組み合わせられるようになりましたが、国内未承認レンズなどは引き続き「自由診療」扱いとなります。
参照:日経メディカル「『白内障への多焦点眼内レンズ』が選定療養に」
【保険適用】単焦点眼内レンズの白内障手術費用

単焦点眼内レンズは、白内障の治療そのものを目的としたレンズとして公的医療保険の対象になっており、費用の見通しが立てやすいのが特徴です。
手術代・術前検査・レンズ代・点眼薬代までを含めても、自己負担割合に応じて数万円程度に収まります。
ここでは、負担割合別の費用目安と、両眼手術や高額療養費制度を使った場合に自己負担がどう変わるかを具体的に見ていきます。
自己負担割合別(1〜3割)の費用目安
単焦点眼内レンズを使った日帰り白内障手術の窓口支払額は、手術代・診察費・術前検査・レンズ代・点眼薬代を含めて、片眼あたり次の金額が目安です。
| 自己負担割合 | 片眼の費用目安 | 両眼の費用目安 |
|---|---|---|
| 1割負担 | 約15,000円 | 約30,000円 |
| 2割負担 | 約30,000円 | 約60,000円 |
| 3割負担 | 約45,000円 | 約90,000円 |
自己負担割合は年齢や所得によって決まり、75歳以上は原則1割、70〜74歳は原則2割、70歳未満は3割(現役並み所得者は年齢を問わず3割)が基本です。
片眼・両眼、同月手術の場合の費用の違い
両眼を同じ月に手術する場合、片眼ずつの費用を単純に2倍した金額よりも、実質的な負担は軽くなるケースがあります。
同じ月にかかった医療費は高額療養費制度の対象として合算できるため、上限額を超えた分は払い戻しの対象になるからです。
一方、片眼ずつ別の月に手術する場合は、それぞれの月で自己負担が発生するため、同月にまとめるより総額が上がることがあります。
高額療養費制度で自己負担はさらに下がる【2026年8月改定】
白内障手術の窓口負担自体は数万円程度で高額療養費制度の上限額に達しないケースが大半ですが、他の医療費と合算する場合や、両眼を同月・入院で行う場合には制度の対象になることがあります。
2026年8月の診療分から、所得区分ごとの自己負担上限額が引き上げられました。
| 区分(年収目安) | 〜2026年7月の上限額(月) | 2026年8月〜の上限額(月) |
|---|---|---|
| 約1,160万円〜 | 252,600円+(医療費-842,000円)×1% | 270,300円+(医療費-901,000円)×1% |
| 約770万〜1,160万円 | 167,400円+(医療費-558,000円)×1% | 179,100円+(医療費-597,000円)×1% |
| 約370万〜770万円 | 80,100円+(医療費-267,000円)×1% | 85,800円+(医療費-286,000円)×1% |
| 〜約370万円 | 57,600円 | 61,500円 |
| 住民税非課税 | 35,400円 | 36,900円 |
あわせて2026年8月からは、すべての所得区分に「年間上限(8月〜翌年7月の合計)」が新設されました。1年間の自己負担額の合計が上限に達すると、それ以降の負担分は払い戻しの対象になります。上限額は、年収約370万〜770万円の区分と約370万円未満の区分で年53万円、住民税非課税世帯で年29万円です。
ただし白内障手術単体の窓口負担は前述のとおり数万円程度のため、多くの方にとっては「他の持病の医療費と合算したときの安心材料」として押さえておく程度で問題ありません。
70歳以上/70歳未満で上限額はどう違うか
70歳以上の方は、外来(通院・日帰り手術)の自己負担に、個人ごとの上限(外来特例)が別途設けられています。2026年8月以降の上限額は、住民税課税世帯の「一般」区分(年収約370万円未満)で月22,000円、住民税非課税世帯で月11,000円です。
日帰りの白内障手術は外来扱いのため、この上限が適用されます。たとえば2割負担の方の片眼手術は窓口負担の目安が約30,000円ですが、外来特例により支払いは月22,000円までに抑えられます。1割負担の方も、両眼を同じ月に手術すれば合計約30,000円となり、同様に22,000円が上限になります。
70歳以上の方は、マイナ保険証または高齢受給者証を提示すれば、窓口で自動的に上限額までの支払いになります。
【選定療養】多焦点眼内レンズを選んだときの費用と差額

「老眼鏡をかけずに近くも遠くも見えるようにしたい」という理由で、多焦点レンズを検討する方も増えています。
ただし多焦点レンズは公的医療保険の対象外のため、単焦点レンズに比べて数十万円単位の追加費用が発生します。
ここでは、2020年の制度改正で導入された「選定療養」の仕組みと、レンズの種類ごとにどの程度の差額が生じるのかを具体的に見ていきましょう。
選定療養の仕組み(手術は保険+レンズ代の差額のみ自費)
2020年3月までは、多焦点眼内レンズを使う手術は「先進医療」として扱われ、白内障手術そのものも含めて全額自己負担、または先進医療特約のある生命保険でカバーする必要がありました。
2020年4月の制度改正で「選定療養」の枠組みが整備され、白内障手術部分は単焦点レンズと同様に保険が適用され、多焦点レンズを選んだことによる追加費用のみを自己負担すればよい仕組みに変わっています。
単焦点との差額はいくら?レンズ別の費用相場(20万〜50万円台)
手術部分の自己負担(片眼15,000〜45,000円)に加えて、レンズの種類ごとに次のような追加費用(レンズ差額)が発生します。
| レンズの種類 | 片眼あたりのレンズ差額(自費) |
|---|---|
| 焦点深度拡張型(EDOF) | 約20万〜40万円 |
| 2焦点レンズ | 約20万〜35万円 |
| 3焦点レンズ | 約33万〜40万円 |
| 乱視矯正付きレンズ(トーリック) | 上記に+3万〜5万円程度 |
つまり、3割負担の方が3焦点レンズにトーリック機能を加えた場合、片眼で「手術代約45,000円+レンズ差額約33万〜45万円(3焦点33万〜40万円+トーリック3万〜5万円)」=合計およそ38万〜50万円程度が目安になります。
実際の金額はクリニックや採用レンズによって差があるため、必ず個別の見積もりで確認が必要です。
選定療養対象になる代表的なレンズ(2焦点・3焦点・EDOF・トーリック)
選定療養の対象となるのは、厚生労働省の承認を受けた多焦点眼内レンズです。代表的な製品には、2焦点タイプ、3焦点タイプ(遠中近すべてにピントが合いやすい)、EDOF(焦点深度拡張型・中間距離に強い)、それぞれに乱視矯正機能を加えたトーリックタイプなどがあります。
見え方の特性やハロー・グレア(光のにじみ)の出やすさがレンズごとに異なるため、費用だけでなく術後の見え方の希望もあわせて医師に相談することが大切です。
【自由診療】国内未承認レンズを選ぶ場合の費用

選定療養の対象になるのは、あくまで厚生労働省の承認を受けた多焦点レンズです。より幅広い見え方や、レーザーを使った先進的な手術方法を希望する場合は、国内未承認のレンズや自由診療の手術を選ぶことになります。
この場合、手術費用のすべてが自己負担となるため、選定療養よりもさらに高額になる点を理解しておく必要があります。
費用相場(片眼40万〜100万円)
国内で未承認のレンズを使う場合や、レーザーを使った白内障手術(フェムトセカンドレーザー支援手術)を選ぶ場合は、手術・検査・レンズ代のすべてが全額自己負担の「自由診療」となります。
費用相場は片眼で40万〜100万円程度、両眼では単純計算でその倍が目安です。
選定療養と自由診療、何が違う?費用比較
| 選定療養 | 自由診療 | |
|---|---|---|
| 保険適用の範囲 | 手術部分は保険適用 | 手術・検査・レンズすべて自費 |
| 高額療養費制度 | 保険適用部分のみ対象 | 対象外 |
| 片眼の費用目安 | 約20万〜50万円 | 約40万〜100万円 |
| 主な対象レンズ | 国内承認の多焦点レンズ | 国内未承認レンズ、レーザー手術など |
自由診療は高額療養費制度の対象外になる点が、選定療養との大きな違いです。
費用だけを見ると選定療養より高額になりやすいため、多くのクリニックではまず選定療養の対象レンズで希望に合うものがあるかを検討し、それでも希望する見え方が実現できない場合に自由診療を選ぶ、という流れが一般的です。
自由診療だからこそ得られる、治療の精度とレンズの選択肢
自由診療は費用こそ高額になりますが、保険診療・選定療養にはない選択肢の広さや技術的な精度が得られる点も理解しておきたいポイントです。
選べるレンズの幅
保険診療で使えるのは単焦点レンズのみ、選定療養で使えるのも国内承認の多焦点レンズに限られます。
一方、自由診療であれば国内未承認の5焦点レンズ(例:Intensity)や、自由診療で取り扱うタイプの3焦点レンズ(例:FINE VISION)など、より幅広い選択肢の中から、自分の見え方の希望に合うレンズを選べるという特徴があります。
フェムトセカンドレーザーによる手術精度
従来、切開創の作成や水晶体の分割は医師の手作業で行われてきましたが、フェムトセカンドレーザーを用いることで、コンピューター制御によって事前に設定した位置・大きさを正確に再現できるとされています。
これにより、眼内レンズを適切な位置に固定しやすくなり、レンズ本来の機能を発揮しやすくなると考えられています。
屈折矯正を専門とする医師による度数決定
白内障治療全般を扱う眼科と、屈折矯正(ICL・レーシックなど)を専門的に手がけるクリニック・医師とでは、術後の見え方を左右する度数計算に関するノウハウの蓄積が異なります。
老眼・乱視まで含めた見え方を重視したい場合、屈折矯正を専門とする医師に相談することも選択肢の一つです。
参照:アイクリニック東京「白内障手術(レーザー白内障手術)」
早見表|単焦点・選定療養・自由診療の費用比較
| 区分 | 片眼の費用目安 | 両眼の費用目安 | 高額療養費制度 |
|---|---|---|---|
| 保険診療(単焦点・3割負担) | 約45,000円 | 約90,000円 | 対象 |
| 選定療養(多焦点・3割負担) | 約20万〜50万円 | 約40万〜100万円 | 保険適用部分のみ対象 |
| 自由診療(多焦点・自費) | 約40万〜100万円 | 約80万〜200万円 | 対象外 |
白内障手術の自己負担を軽減する4つの制度
ここまで見てきたように、多焦点レンズを選ぶと数十万円単位の費用がかかりますが、実はいくつかの公的・民間の制度を組み合わせることで、実質的な負担を軽減できる余地があります。
ここでは、白内障手術に関わる代表的な4つの制度を、それぞれ「何が対象になるか」に注目して整理します。
高額療養費制度(2026年8月改正のポイント)
前述のとおり、2026年8月から所得区分ごとの月額上限が引き上げられ、あわせて年間上限が新設されています。
白内障手術単体で上限に達することは少ないものの、同じ月に他の治療を受けている場合は、まとめて申請することで自己負担を抑えられる可能性があります。
医療費控除(確定申告での還付)
1年間(1〜12月)に支払った医療費の合計が一定額を超えた場合、確定申告により所得税・住民税の負担を軽減できます。控除額は次の式で計算します。
(1年間の医療費総額-保険金等の補填分-10万円、または所得の5%のいずれか少ない額)=医療費控除の対象額
白内障手術では、保険診療の手術費用はもちろん、選定療養・自由診療で自己負担した多焦点レンズ代金も医療費控除の対象になります。
術前検査費用や、通院にかかった公共交通機関の交通費も対象に含められる点も覚えておくとよいでしょう。
生命保険・医療保険の手術給付金
白内障手術(水晶体再建術)は、多くの医療保険・生命保険で手術給付金の支払い対象になっています。
給付額は「入院給付金日額×倍率(10〜40倍程度)」で計算されることが多く、日帰り手術より入院手術の方が倍率が高く設定されている保険もあります。
ここで注意したいのは、給付金の金額は基本的に術式(水晶体再建術)に対して定額で支払われるため、レンズの種類(単焦点か多焦点か)によって金額が変わるわけではないという点です。
また、2020年4月の制度改正で多焦点レンズを使う手術は「先進医療」の対象から外れているため、先進医療特約からの給付は原則対象外になります。
加入している保険の契約内容によって取り扱いが異なるため、手術を決める前に保険会社へ確認しておくと安心です。
限度額適用認定証・マイナ保険証の事前活用
高額療養費制度を利用する場合、通常はいったん医療機関の窓口で自己負担分を全額支払い、後日払い戻しを受ける流れになります。
事前に加入している健康保険から「限度額適用認定証」の交付を受けて医療機関に提示すれば、窓口での支払いを最初から自己負担上限額までに抑えられます。
マイナ保険証を利用する場合は、限度額情報の提供に同意することで、認定証がなくても同様に窓口負担を上限額までに抑えられる仕組みが利用できます。
白内障手術の費用に関するよくある質問

Q. 白内障手術は生命保険の給付金対象になりますか?
A. 多くの医療保険・生命保険で、白内障手術(水晶体再建術)は手術給付金の対象です。ただし給付額はレンズの種類に関わらず定額であることが多く、多焦点レンズを選んでも給付額が増えるわけではありません。
契約内容は保険会社によって異なるため、事前の確認をおすすめします。
Q. 両眼同時手術と別日手術、費用はどちらが得ですか?
A. 同じ月に両眼の手術を行うと、高額療養費制度の合算対象になりやすく、実質的な自己負担が抑えられる場合があります。
一方、生命保険の手術給付金は両眼を同時期に手術した場合、1回分のみの支払いとなる契約が一般的です。費用面・安全面の両方から、医師と手術スケジュールを相談することが大切です。
Q. 多焦点レンズを選んでも医療費控除は使えますか?
A. 使えます。選定療養・自由診療のいずれで支払った多焦点レンズの追加費用も、治療目的の手術であれば医療費控除の対象に含まれます。
Q. 手術費用以外にかかる費用(検査・点眼薬など)はありますか?
A. 術前検査費用や術後の点眼薬代は、前述の費用目安に含まれているケースが一般的ですが、クリニックによって別途費用がかかる場合もあります。
見積もりの際に「検査・薬剤費込みかどうか」を確認しておくと安心です。
Q. 費用はクリニックによって違いますか?
A. はい。特に選定療養・自由診療のレンズ代は、採用しているレンズの種類やクリニックの料金設定によって数万〜数十万円単位で差が出ます。
同じ「多焦点レンズ」でも金額に幅があるため、複数のクリニックで見積もりを比較することをおすすめします。
まとめ|自分の場合の費用は、まずカウンセリングで確認を
白内障手術の費用は、単焦点レンズであれば保険適用で数万円程度に収まりますが、多焦点レンズを選ぶと選定療養で20万〜50万円、自由診療ではさらに高額になります。
高額療養費制度や医療費控除、生命保険の手術給付金を組み合わせることで、実質的な負担を軽減できる余地もあります。あわせて、自由診療であれば選べるレンズの幅や手術精度の面でも選定療養にはない価値が得られます。
ここで紹介した金額はあくまで目安です。実際にいくらかかるかは、視力の状態や希望する見え方、加入している保険の契約内容によって一人ひとり異なります。
まずは眼科でのカウンセリングで、自分の場合の正確な費用を確認することから始めてみてください。









