こんにちは。
最近、円錐角膜のお問い合わせがとても増えています。珍しい疾患ではないにも関わらず、まだまだ日本ではこの病気や治療法が浸透してないことを実感させられます。
今回は『角膜クロスリンキングとは』、『角膜クロスリンキングのメリット・デメリット』、『手術の適応』の3点についてお話しようと思います。
【角膜クロスリンキングとは】
角膜クロスリンキングは、角膜にリボフラビン(ビタミンB2)を点眼し、紫外線の照射と空気中の酸素との相互作用で、角膜の大部分を占める実質コラーゲン線維同士に架橋構造(コラーゲン線維の結合)を生じさせる治療法です。
これにより角膜の強度が増して円錐角膜の進行を予防できます。また角膜を平坦化する効果もあり、わずかではありますが近視や乱視の程度を軽くすることもできます。
●角膜クロスリンキングの歴史
角膜クロスリンキングは、2003年にドイツで開発されました。
既に15年以上の歴史があり、ヨーロッパ・アメリカでは国の認可を受けた治療法として円錐角膜のスタンダードな治療とされ、9割以上の方で円錐角膜の進行が止まることが確認されています。
●当院の角膜クロスリンキングのプロセス
当院ではカスタム角膜クロスリンキングを施行しており、手術のプロセスは以下の通りです。手術時間は点眼・照射を合わせて30分程度です。
※カスタム角膜クロスリンキングとは?
円錐角膜は突出の位置や程度に個人差があります。
通常の角膜クロスリンキングが角膜全体に均等に8mm径の紫外線を照射するのに対し、カスタム角膜クロスリンキングは角膜形状解析の結果を基に、薄い部分に局所的に強いクロスリンキング効果を起こさせるよう紫外線の照射を行います。
これにより、効率よく且つ高い効果を出せることが特徴です。
※モザイクシステムについて
当院で国内4台目の導入となったモザイクシステムは、患者様の角膜形状解析に基づきカスタムメイドされた照射を行うトポガイド高速クロスリンキングが可能です。
現在、カスタム角膜クロスリンキングを行える機器はこのAvedro社のモザイクシステムのみです。
アイトラッキング機能と呼ばれる眼のわずかな動きに正確に追従する機能も搭載されており、面積の小さな突出部位にも正確に照射します。
また、治療の効果を高めるため、モザイクシステム専用のゴーグルで高濃度酸素を眼に供給しながら照射を行なっております。
唯一のデメリットは、一人一人に合わせたカスタムメイドの照射のため通常の角膜クロスリンキングよりも時間がかかることです。
<メリット>
• 角膜形状解析を基にしたカスタムクロスリンキング
• わずかな眼の動きに追従するアイトラッキング機能
• 治療の効果を高めるため高濃度酸素を専用ゴーグルで供給
<デメリット>
• 一人一人に合わせてカスタマイズされた治療のため照射時間が15〜20分程度かかる
【角膜クロスリンキングのメリット・デメリット】
角膜クロスリンキングは、ハードコンタクトレンズや円錐角膜用の特殊なコンタクトレンズでの矯正と進行した場合は角膜移植が必要になる円錐角膜の進行を抑えることが出来る画期的な治療法ですが、メリットもあればもちろんデメリットもあります。一つずつみていきましょう。
<メリット>
- ① 円錐角膜の進行防止効果
角膜の強度が上がり、円錐角膜の進行を予防します。 - ② 近視・乱視の軽減の可能性
角膜クロスリンキングの角膜を平坦化する効果により、ごくわずかではありますが近視や乱視の程度を軽くすることができます。
<デメリット>
- ① 手術費が高い
角膜クロスリンキングは健康保険が使用できず自由診療での治療のため、自己負担額が高くなります。 - ② 術後の一時的な痛み
術後2~3日は強い痛みがあります。そのほか、異物感、乾燥感、眩しさやかすみ、涙が出る、充血やまぶたの腫れなどを生じることもありますが、これらの症状は1週間ほどで徐々に改善してきます。 - ③ 一時的な視力の低下
角膜のむくみが起こり一時的に視力が低下することがあります。
また、まれに角膜の混濁や感染症が起きることがありますが、ほとんどは時間の経過や目薬の処置等において回復します。処方された点眼薬を継続して使用すること、検診をきちんと受けていただくことがたいへん重要ですので、術後の定期検診は忘れずに受診しましょう。 - ④ 全ての方が完全に進行を抑えられるわけではない
円錐角膜がかなり進行していると適応にならない場合や、まれに角膜クロスリンキング施行後でも円錐角膜の進行が認められる方がいらっしゃいます。
当院では1年間の保証が付いているため、期間内であれば無料で再照射させていただきます。
【角膜クロスリンキングの適応】
<この手術法が適する方>
●年齢14歳以上の方(20歳未満は保護者の同意が必要です。)
●円錐角膜、または角膜屈折矯正手術後の角膜拡張症と診断されている方
●角膜中央部の厚みが400μm以上ある方
<この手術法が適さない方>
●目の病気 ( 活動性の感染症、角膜ヘルペスの既往、緑内障、網膜変性疾患等 ) がある方
●角膜移植、緑内障手術、網膜剥離手術などの既往がある方
●膠原病など角膜の創傷治癒に影響を与える全身性の疾患がある方
●角膜中央部の厚みが400μm未満の方
●妊娠、授乳中の方
●その他、担当医が不適応と判断した場合
いかがでしょうか。
この治療は術後の一時的な見にくさや痛みがあるものの、『ビタミンBを点眼して紫外線を当てる』という身体の負担がかなり少ない治療です。
こういう治療もあるということを頭の片隅に置いていただき、円錐角膜と診断されたもしもの時に役立てていただければ幸いです。
角膜クロスリンキング治療について詳しくはこちら